石川裕人百本勝負 劇作風雲録

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第七回 人生は変わっていただろうか?

   84年の冬、「十月劇場」は仙台市内中心部の雑居ビルの4階に25坪のアトリエ劇場を開設した。定禅寺通りという今ではJazzフェスや光のページェントで賑わう繁華街で東北一の歓楽街・国分町の近くである。ここでは劇団洪洋社当時の’76年に「愛情劇場」を上演していた。このビルを借りて「演劇工房」という劇団が活動していたが、解散。その後、ずっと空いていたのを借りたのである。確か当時の家賃は10万円くらいだったと思う。これは破格の安さで、東京の演劇人からは羨望の的だった。ここを拠点に「十月劇場」はロングランへの取り組みと、貸し劇場運営に入る。

 そのアトリエ劇場こけら落とし公演は翌年’85年2月、17本目の「じ・えるそみーな」。フェリーニの「道」をベースにした困難な時代に困難な愛を克服しようともがく男女の物語で役者3人を3チームにわけ、15ステージの上演を行った。この千秋楽には客席スペース50名に120名くらい入り、とんでもない状況になった。


        


 そしてほぼ3ヶ月後5月札幌、6月アトリエ公演の18本目「翔人綺想」。この戯曲からペンネームを現在の石川裕人に替えた。理由は今では思い出せないが、やっと自分の作品に自信を持ったのかもしれない。もちろん、この当時はワープロなどない。コクヨの横書き原稿用紙に万年筆で縦書きだった。しかし、これは清書用でまずチラシの裏やダメにしたわら半紙などにとにかく一気に書いていた。一気に書かないとイメージに追いつかなかったからなのだが、(今となっては羨ましい才能だ)だから清書するとき、字がグチャグチャで何を書いたのかわからないこともしばしばだった。戯曲の清書は喫茶店や居酒屋でやっていた。この戯曲は’02年”OCT/PASS”STUDIOファイナル公演で新訂再演している。そのとき戯曲は76本目になっている。この初演時に渡部ギュウ氏が入団、音響オペレーターをつとめた。米澤牛という芸名は札幌公演での打ち上げのとき、ジンギスカンを焼きながら咄嗟に思いついたものだった。今は大成する彼にとっては苦いデビューだったに違いない。


         


 年間3本の公演を打つというのもアトリエを持った強みで私たちは日夜アトリエに通い詰めていた。稽古の休みはなかったかもしれない。あったとしても誰か彼かがアトリエに詰め、自主練をしたり、制作の打ち合わせをしたり、あるいは宴会をしていた。その’85年第3弾は19本目「十月/マクベス」。シェークスピアの「マクベス」を上演しようとする劇団の日々をメタシアター的視点から解体した翻案・構成・オリジナル作である。


          


     
                  (大槻昌之氏撮影)

 次いで’86年大作テント芝居、20本目「水都眩想」。風の旅団からテントを借りて仙台、盛岡、八戸、山形県寒河江と巡った。エホバの証人輸血拒否事件をモチーフにしたアングラ・ファンタジーでる。この芝居は「読売新聞」全国版でも取り上げられ「十月劇場」全国区への足がかりとなった作品でもある。そして私は劇評家・衛紀生氏に妙に気に入られ「水都眩想」で岸田戯曲賞を取ろうと言われた。そのためには演劇雑誌に戯曲を載せなければならないから改訂しろということだった。最近引っ越し荷物の中から手紙の山が見つかった。その中に衛氏のものもあり、「新劇」と「テアトロ」の編集長に話を付けてあるから早く改訂戯曲を私に送りなさい旨の手紙だった。なぜか私はこの話に乗らなかった。生意気だったのである。書き終えたものはそこで終わるというのが私の流儀だった。だから長年再演することをしなかった。それより衛氏の顔をつぶしてしまったわけでもある。しかし、この時もし間違って岸田戯曲賞などとっていたら私の人生は変わっていただろうか。


           


      

                     (大槻昌之氏撮影)


 5月から9月までの断続的な「水都」の旅の後、21本目の「モアレ」場末名画座の人々を12月に上演。前作「水都」でハードな芝居をやったので、ここは得意の映画をネタにしたコメディで’86年を閉めた。そして遂に「十月劇場」は翌年自前のテントを持つことになる。


      



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